交換スケジュールを決める2つの基準
オイル交換の目安は、間隔を基準とした”Interval-based Oil Changes”とオイルの状態を基準とした”Condition-based Oil Changes”の2つのアプローチがあります。
間隔基準-Interval-based Oil Changes
オイルの状態に係わらず、予め定めた間隔でオイルを交換します。その間隔とは、カレンダーを基準に何ヶ月間と決めたり、運転時間や燃料消費量、また停電や運転停止といった生産状況を基準に決めたりします。
このアプローチは、大半が当て推量であることから、交換頻度としてはひどく過剰もしくは過少になる可能性があります。
状態基準-Condition-based Oil Changes
時間に係わらず、オイルの状態によって交換します。オイルの劣化速度は一定でなく、作業サイクルや使用環境条件、潤滑剤の品質・保全方法など、様々な要因に大きく影響されます。したがって、分析により原料や添加剤の状態や汚染具合etc.を把握し、総合的に判断して交換します。
間隔基準とは異なり、適切な頻度での交換が可能となりますが、タイミングを見逃さないように注意を払わなくてはなりません。
分析結果において着目すべき4項目
では、多々ある分析項目の中から、何を見ていけばよいのでしょうか。
オイルによって管理基準は異なりますが、基本4項目とそれが何を示しているのかを簡単にご説明します。
①動粘度(単位:cSt)
新油から±10%以内が目安です。増加している場合は、他の油が混入している又はオイル が劣化していることを示し、低下している場合は、粘度指数添加剤の消耗などが考えられます。
②酸価(単位:mg KOH/g … オイル1g中に含まれる酸性物質の中和に要する水酸化カリウムKOHの質量mg)
新油の酸価値を基準として、上昇している場合は酸化劣化が疑われ、低下している場合は添加剤の消耗が考えられます。
③水分(単位:ppm, %)
増加している場合は、水分凝縮や冷却水の混入が考えられます。0.05%以上混入すると油の外観が曇るので、外観を観察することで水分混入の有無は判断可能です。
④汚染度(計数法:NAS/ISO等級、重量法:mg/100 ml)
上昇している場合は、コンタミの混入・摩耗紛の増加等が考えられます。
オイルの使用限界の判断基準
なぜ、前述の4項目(動粘度・酸価・水分・汚染度)に着目するかというと、オイルが使用限界の状態であるかを判断する材料となるからです。動粘度・酸価で劣化を、水分・汚染度で汚染を判断します。
劣化は交換、汚染は浄油
劣化と汚染を混同していたり、誤認識されているケースが多く見受けられます。しかし、劣化と汚染は異なります。確かに、オイルが劣化してしまったら交換しなければなりません。なぜなら、劣化したオイルは決して元に戻らないからです。しかし、汚染は必ずしもそうとは限りません。程度が激しくない限り、その汚染因子であるコンタミをフィルタで除去し、またエアブリーザでシステムへの侵入を防ぎ、コンタミによる摩耗を起こさせないようにする等、オイル交換の前に講じられる対策があります。
従って、Interval-basedにより、まだ使用できる可能性があるオイルを廃棄してしまったり、もう交換しなくてはならないオイルを使用して故障の可能性を高めてしまうよりも、Condition-basedでオイルの状態をきちんと把握した上でオイル交換を行うことを推奨します。
オイル中の汚染(コンタミや水分)を取り除き清浄度を維持した上で、酸価・動粘度によって劣化具合を把握し、適切なタイミングでのオイル交換を行うことが、潤滑管理上またその費用面においても、最も健全かつ効果的であると言えます。